【書評】『リーダーシップからフォロワーシップへ』中竹竜二
著者は元早稲田大学ラグビー部監督で、あの清宮幸太郎選手(日本ハムファイターズ)の父、清宮克幸さんの跡を継ぐかたちで監督となりました。
2007年と2008年にはチームを連覇に導いた名将です。
清宮監督が、抜群のカリスマ性がありトップダウン方式で指導するタイプだったのに対して中竹監督は真逆で、自分は一歩下がって後ろから選手を支えるような指導スタイルだったそうです。
この本はそんな、一見すると「リーダーに向いてなさそうな人」が、どんなリーダーとなり、そして組織にどんなメリットをもたらせるかということが書いてあります。
◎リーダー像の移り変わり
当時の「リーダー」のイメージと言えば、強い牽引力のある言葉で、フォロワーがやるべきことを指示し、目に見える結果を早く出す能力に長けた指導者、というのが主流だった。堂々とした風格、張りのある声と明確なディレクションといった、分かりやすい“らしさ”が求められていた時代。(「はじめに」より)
これが、著者の言う「ひと昔前のリーダー像」です。
しかしこんな資質を持った人間はそうそう見つからないのに加え、長期的な視野で見ると組織にとって「害」であるという見解まで出てきているそうです。
その理由は「指示待ち人間」が増え、部下が育たず、結果的に組織の成長を滞らせてしまうからです。
そこでこれからの時代に求められているのが、「部下を成長させるリーダー」なのです。
◎中竹監督
著者である中竹さんは、自身のことをこう表現しています。
集団の中に入ってしまうと、どこにいるか分からなくなるほど、存在感がない。身長は結構あるものの細身でなで肩のため、人に対する威圧感は皆無。人ごみに溶け込んでしまうため、ラグビー場でもあまり気づかれることがない。声には迫力がなく、口調も柔らかで、表情もどこか自信がなさそうに見えるようだ。
わざわざ出版した著書でよくここまで自分のことを貶めることが出来るなと感心しますが、本人はこれをむしろ「強み」だと言っています。
「日本一オーラのない監督」というキャッチフレーズとともに、このスタイルにはいくつかのメリットがあると言います。
- 周囲が同じ目線で意見を言ってくれる
- 組織の風通しが良い
- 完璧を目指さなくていい
これにより中竹さんは、無理に背伸びをする必要がなく「等身大の自分」で選手と向き合うことが出来ると言います。
◎フォロワーシップ
世の中にリーダーに関する書籍は数多く出ていますが、この本が斬新なのはリーダー論だけでなく、その周囲の「フォロワー論」が書かれているところです。
フォロワーとはつまり組織における「リーダー以外」のことを指し、会社では部下、部活動では生徒がこれに当たります。
さらに
「リーダーのためのリーダーシップ論」
「リーダーのためのフォロワーシップ論」
「フォロワーのためのフォロワーシップ論」
「フォロワーが考えるリーダーシップ論」
の4つの章に分かれています。
その中でも「フォロワーのためのフォロワーシップ論」が最も新しい視点をくれるのではないでしょうか。
フォロワーというととにかく「リーダーを目指して頑張る」という風になりがちですが、敢えて「フォロワーである自分(たち)には何が出来るか」を考察する章です。
個人的に印象に残ったのは日本と欧米の組織に対する意識の差で、よく言われる集団主義の日本と個人主義の欧米という構図なのですが、興味深いのは「個人主義の国の方が組織として強い」ということです。
少し前にサッカーの本田選手が「個」の力が大事だと言って、他の日本代表の選手らにも浸透し、皆んなでここここうるせー!と思う時期がありましたが、海外でプレーする本田選手は身に染みてそれを感じていたのでしょう。
◎まとめ
実は前にこの本と似たようなテーマの記事を書いていました(ドヤ顔
世間の強いチームや組織を見ていて、もうワンマンの時代じゃないよなと、なーんとなく感じているところはあったので、それを10倍詳しく書いてくれている本と出会えて良かったです(^o^)
ワンマンじゃないのに個人主義というのは一見矛盾しているように見えますが、これは全くの別物で、理想は「個人が独立した考えを持ちつつも、同じ目標に向かっている組織」なのかなと思います。
やっぱり、「個」の時代ですよ。
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